Statement

「きれいやったとよ……」。それがピカドン(原爆)から生き残った祖母から聞いた最後の言葉だった。原爆投下から70年。人の一生ほどの時間が経過し、当時を記憶している人はほとんどいなくなったが、私は祖母がなぜあんな憚られるようなことを言ったのか知りたくなった。しかし、記録として残されているものは破壊され尽くした街の跡や熱で溶けた瓶や金属、人の形を止めた亡骸など目を背けたくなるものばかりだ。現在の長崎の街も平和祈念像があるだけで、街自体も人と同じように原爆の記憶を失くしつつある。当時の残滓を見つけることは困難だった。 そこで私は「きれいやったとよ」を写真で表すことにした。現代の長崎の街を撮影し、そこに祖母が見たであろう空を再現しようと試みた。 ピカドンの光は核分裂の光で、原理は恒星と同じ。つまり、地上数100mの上空に星が現れるのである。そう考えると、祖母がギリシャ神話のイカロスのように太陽に焦がれ、魅了されても不思議ではない。恒星が光を放った瞬間、街は闇に沈み、生と死の境界線を引く。そして、次の瞬間鉄は曲がり、ガラスは溶け、建物は崩壊し、人は焼けただれて醜い肉塊へ化す。 その瞬間を想像しながら、私はその瞬間の前で時を止めたいと自分の魂が叫ぶのを聞いた。ピカドンがきれいであるうちに、醜さを示す前に絶対に止めなければ……。 被爆者三世として、二度と長崎のようなことが起こらないように、次の瞬間が来る直前で時間を止めた作品を祈りながらつくっている。

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